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わたしを通り過ぎた本たち

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2009年2月 2日 (月)

あれはたしかに

今年、これで何度目の発熱だろう。
毎日熱を出していて、薬をほとんど毎日飲んで仕事に行っているので、ちょっとモヤモヤしたところがある。

金曜日から2泊3日のお泊り出張があるので、大事を取って休む。
こんな時に限って、買い置きのものがない。
いろいろ、ない。

夕方、身体を無理やり起こして近所のスーパーに向かった。
食べたいものは何にもない。
何とか食べられそうなものを買って帰途に着いた。


マンションの入り口まで来た時、わたしは見たのだ。
この半年、まったく見かけなかった猫を。

キジトラのソックス猫で、目がつぶれた野良猫だったから、よく覚えていたのだ。
なつかないけれど、もしかしたら手が届くかも。
そう思って、そっと手を伸ばすと彼はいつもこっちをにらみつけてしなやかにブロック塀を上がり、
背中を見せてしまうのだった。
そんなそっけない、こびないところも好きだった。

半年は確実に経過した年末のある日、5階に住むおねえさんとエレベーターで一緒になった。
以前、初めてであるにも関わらず、朝のエレベーターでわたしの香水を、
「うわあ、いい香り~」
とほめてくれた人だ。ありがとう。
ふんわりした感じの気のいいお姉さんである。

久々に会って、開口一番、
「猫、見た?」
と言う。

返事に困っていると、
「あの猫ねえ、飼い猫だったみたいなの」
何でわたしにそんなこと言うんだろ、と不思議に思ったけれど、黙っていた。
その日は雪が降っていた。
猫はどうしたんだろうとその時ふいと思い出したのだが、日々の雑事にまぎれて失念していた。


そして、わたしは夕方、あの猫を見たのだ。
わたしは、最近どうしてたんだと声をかけながら近づく。
その距離になっても彼は逃げる気配がない。
かえって不安になったわたしを一瞬見上げると、彼はすばやく身を翻してどこかに行ってしまった。
ブロック塀の上を見ても、いない。
奥を見やってもいない。

あれはたしかに、あの猫だった。
しかし、確信がもてないままわたしは布団にもぐりこむ。
ちいさなとげがひっかかったような感覚を残して、熱っぽい身体を横たえる。

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